各局とも現地レポーターが鉄道についての知識が皆無なこと。西日本会社の記者会見に押しかけている方はちゃんと質問しているけれど(当たり前だが)、現地からは悲惨な状況を伝えるばかりで、事故現場の曲線半径やカント、制限速度はどうだったのか、線路脇をちょっと調べればすぐにわかるようなことすらも伝える人はいなかった。「鉄」な人はゴマンといるし分野も「模型」「撮影」「完乗」などといろいろあるけれど、その程度のことはみんな基礎知識として持っているから、どうして知っている人がレポーターとして出てこないのかが不思議。現場の無残な状況は見ればわかるのだから、ことさらに悲惨さを上塗りするようなレポート、その上塗りの言葉に凝るような「詩人」はいらないのである。
確かにそんな情報を知った所で局外者としては何ができるというわけではないし、どうということもないのだが、自動車事故のニュースだって「現場は見通しのよい直線道路で…」とか「現場は急カーブで見通しが悪く…」などの説明が入るではないか。少なくとも知りたい情報、伝えるべき情報の一つだと思うし、伝える姿勢を見せてほしかったのだが。
なんだか言いたい放題言っている記事のような気がするが…
“鉄道事故の専門家”とやらもテレビのインタビューに答えて「国鉄時代にレベルの低いATSをつけてしまった。」と語っていたが、あんた本当に専門家か?と言いたくなった。確かに今回のATS-SWは最も古いタイプの装置には違いないが、当時の国鉄がたとえ拙速だとしてもATSの設置を進めたのは、あの1962年の三河島事故の教訓からだったはずだ。より高度なCTCは当時すでにあったけれど(新幹線で)、高価なCTCを全国規模で設置するのは無理があった。国鉄も計画を前倒しにしてまでATSの設置をしたのであって、設置途上の翌年には鶴見で列車多重衝突事故が起きてしまったものの、以来三河島事故のような大事故は発生していない*1。その事実を説明せずして単に「レベルの低いATS」とだけしか言わなかったら公平を欠く。
もちろん、福知山線という大都市近郊路線に長い間旧式のシステムしか入れていなかったことについては、西日本会社も怠慢のそしりを免れないだろう。が、東京近郊ほどの世界でも類を見ない超高密度運転ではない線区に新しいものを持ってくることなど、常識では考えられない。設備投資は無限ではないから優先順位の問題である*2。ましてや民営化した企業に、採算を度外視しても安全を優先せよ、とは誰も言えないはずだ。安全対策(保安)には手を抜かれては困るし、抜くのは認めたくないし、抜いてはいけないものだと思うけれど、利益を生まない分野にはお金をかけにくいのが企業の本能なのだから、民営化する上ではそれが一番の心配事だったはずだし、それを承知の上で民営化したはずだったと思う。安全にはお金がかかる。お金を湯水のように使ってもいいから安全対策をしっかりやれ、と言うならわかるが、それならば初めから民営化などしなければよかった、ということにもなりはすまいか?
それを今さら、あれだけ民営化をあおっておいた大新聞が、何かあると鉄道会社叩きのような記事を書くのは不見識もはなはだしい、と言わざるを得ない。常に公平な視点でものを言ってほしいものである*3。
45,025.7粁。