配達中、前方のT字路の真ん中に何か変なものがいる。近づいてよく見ると、中くらいの大きさのカエルだった。何ガエルというのかは知らないが、茶色いのはヒキガエルだろうか。この所の陽気に誘われて出てきたものらしい。
「へーえ、カエルだなんて、武蔵野市も案外田舎なんだなあ。」と、こちらも今日は荷物が多くて忙しいのを一瞬忘れてのどかな気分になる。
だが、カエルの奴、いる場所が悪かった。交差点の、T字路の、ど真ん中に這いつくばっているのである。こちらも直進する分には問題はないが、直進すれば壁である。ちなみに、次の配達先へ行くには右折しなければならないのだった。
天下の往来をふさぐたぁ太ぇ野郎だ、と腹を立ててみてもはじまらない。いくら相手が道交法に違反しているとはいえ、せっかく出てきたものを潰してしまっては可哀想だから、そうっとそうっとできるだけ静かに交差点に進入し、そろそろとできるだけ静かにハンドルを切った。「踏むなよ、踏むなよ。」と念じながら。
…なんかねー、後輪が少しだけ何か小さなものに乗り上げたような気がしたんだよねー。もちろん、「気がした」だけで、実際の所はどうだったかはわからない。けど、この時ばかりはさすがにバックミラーを見る勇気はなかった。
カエルの真似して笑っちゃお。
44,136.6粁。