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2005-08-12-Fri

_ [TV] ボイスレコーダー ジャンボ機墜落20年目の真実

トモロヲちゃんのパイロット姿が、どうしても同じ日航の「逆噴射機長」に見えてしまうのは私だけでしょうか。*1

*1 似てる似てないの問題ではなく、過去の役柄のイメージで。

_ [BOOK] 壊れた尾翼 日航ジャンボ機墜落の真実

講談社+α文庫 ISBN:4-06-256854-3

去年買って読んで、内容のあまりのあんまりさに投げ捨てておいたのを、改めて読み返してみた。

読み返してみたところで、内容が書き換わっているはずもなく(笑)、やはり紙屑同然の本だった。著者の加藤寛一郎工学博士/東大名誉教授*1は、零戦の必殺技「左ひねり込み」を追いかけ続けてきた人だから、興味と共感を持って読み続けてきたけれど、こんな人の書く本はもう何が題材でも読まないぞ、と決意するに充分なもので。

私は事故報告書は読んでいないので、調査を尽くさなかった事故調査委員会を最大に持ち上げ、報告書の矛盾点にも目をつぶり、とにかく「事故調絶対」の方針を貫いている執筆姿勢については何も言えないが、文庫版加筆時には「パイロット・ミス」を強く匂わせる記述をしている点が「紙屑」と評価する所以である。

たとえば、B747の油圧が4系統とも全て破壊されて「操縦不能」に陥ることがあることなど想定もされていなかった日航機事故と、その4年後、日航機事故を教訓にすることができたスー・シティでのDC10の不時着事故とを全く同列に論じている点などは笑止千万、素人でもアホなことを書いているとすぐわかる。

さらに加藤博士は、事故原因を話し合うために日航のパイロット達のもとを訪れた時に、「乗員がたるんでいたのではないか」という言葉すら吐いている。まともな人間にこんなひどい言葉は吐けない。言えるはずがない。

文庫版全体を通しての印象は、「圧力隔壁の修理ミスもミスを発見できなかったのも、あってはいけないことだが、それはしかたがない。しかし、操縦不能に陥っても乗員が『的確な』操縦さえしていれば生還できる可能性はあった。だから乗員の罪を問え。」少なくとも私にはそう書いてあるように読めた。

ちなみに、加藤博士がパイロットに要求する「的確な操縦」とは、世間では「神技」と呼ばれている類のものだ。乱暴な解釈をすれば「パイロットが『神技』を発揮さえしていれば生還できたに違いないのだから、事故原因はどうあれ、『神技』も使えなかったヘタクソなパイロットが悪い。」と言うことになる。

名古屋空港の中華航空機事故のように、あるバカが意図的に墜落するような操作をしたのならともかく、事故と言えば責任を全部乗員に負わせて済むのなら、安全対策も航空力学さえもいらないということに、この偉いセンセは気がついているかどうか。こんな人に印税をせっせと払ってやった自分にも腹が立つが。

*1 要するに「単なる専門バカ」だったわけだが。

_ [BOOK] 疑惑 JAL123便墜落事故

早稲田出版 ISBN:4-89827-152-9

「紙屑」と言えば、こちらの方がもっと紙屑ではある。

が、それは結論が「演習中(?)の自衛隊の標的機が衝突→事実隠蔽のための自衛隊機による撃墜」説だからであって、報告書の矛盾点、調査委員会の態度を追及する点では正しい姿勢だ。事故調が「捨ててきた」可能性の方を拾っていくとこうなる、という仮説の一つだが、少なくとも、すべての矛盾点は無視する姿勢をとり続けた上記の加藤説なんかよりははるかに傾聴するに値する。

それでも「紙屑」なのは、センセーショナルなことを書けば売れると思ったのであろう出版社と著者の姿勢に疑問を持ったから。買っちゃった者がそう言うのもなんだけど(笑)。

_ [BOOK] 日航ジャンボ機墜落 朝日新聞の24時

朝日文庫 ISBN:4022606061

日航機墜落事故を取り扱った本の中では最低の部類に入る一冊。確かに、「朝日新聞はどう取材し、報道したのか。そのプロセスを克明に綴る。」というところをよく確かめもせず、ただ書名にひかれて買ってしまった私がバカだったのだが、内容ときたら手前味噌の苦労話(自慢話)と、遺族の心情も考えない強引な押しかけ取材の言い訳と正当化、「報道の自由」を楯にした巨大報道機関の傲慢さの美化に終始していた。

この本ばかりは文字通り捨てた。古新聞と一緒にして。当時のチリ紙何枚分になったかなあ。

_ 総論

日本の航空事故調査報告では、まともな結論が出された例は極めて少ない。柳田邦男さんの『マッハの恐怖』に始まる一連の著作を読んでいくと、航空学の権威、航空界の精鋭、要するに日本のトップクラスの頭脳を集めたはずの事故調査委員会の出した結論が、素人でも思わずツッコみたくなるようなものばかりであるということに気がつく。たとえば、東亜国内航空「ばんだい号」墜落事故の報告書の一例。航路を特定するのに意見が対立して難航した話だが、「(函館空港で)飛行機の爆音を聞いた者もいるが、聞かなかった者もいる。だから飛行機が空港近くまで来たとは言えない。」という論調で貫かれている。アメリカン・ジョークで裁判官が「殺人現場を目撃した者が3人、見ていなかった者が12人、したがって容疑者は無罪とする。」というのがあったが、まさにジョーク並みの報告書であるようだ。なお、調査結果は「パイロットの操縦ミスを強く匂わせた原因不明」で、日本の報告書にはこの手の結論が多い。

日航機事故については「圧力隔壁」という機体の欠陥で片がついたけれど、「事故を決して正面から捉えようとしない」日本の事故調査の系統に属すると言っていいだろう。


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