老母がまる1ヶ月に及ぶ入院生活から帰ってきた。入院中の荷物のほか、なぜか途中のスーパーで買った食材を抱えて。いきなり「主婦モード」全開である。
老父の「いいからおとなしくしてなさい!」という小言を尻目に洗濯物を干し、台所に立ち…入院中も病院の清掃のおばちゃんと競いあって掃除をし、朝は近所の神社へラジオ体操に行って近在のお年寄りと仲良くなったそうだから、動いていないと死んでしまうようだ。前世はマグロか何かだったのだろうか。老父に訊いてみようと思ったが、「母ちゃんってマグロだった?」と訊いて別の意味に解釈されても困るので、それは訊かないことにしておく。
某日。老父が「お前にも包丁の研ぎ方教えとかないとなあ。」と言うので、「そのくらいできるけど、今は砥石なんか使わなくても"包丁研ぎ器"があるんだよ。」と答えると、「…ふーん。」と拍子抜けした様子。
某日。おさんどんをしていると、老父が「どうだ、よく切れるだろう?」と自慢気に言う。どうやら前の日に包丁を研いでおいてくれたらしい。
「…う、うん。よく切れるよ、ありがとう。」返事に一瞬詰まる。その時私が切っていたのは豆腐だったから。
ベタなコントじゃないっつーに。
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